第5回インタビュー「DAOには世界を変える可能性がある」

第5回インタビュー「DAOには世界を変える可能性がある」

 日本DAO協会で活躍されているメンバーの方に、協会での活動に参加したきっかけやDAOの魅力についてお伺いする連載企画。

第5回目は、ウェブコンサルタントをしながら協会組織のオペレーション設計やマネジメントなどで協会運営を支えるshigeさんにインタビューしました。

shigeさんプロフィール

プロフィール: shige さん

日本DAO協会 レップホルダー
デジタルマーケティングや非広告領域の集客が専門のウェブコンサルタント。本業の傍ら、組織のオペレーション設計やマネジメントなどで当協会の運営を支えている。

組織オペレーション設計や運営スキルを活かして貢献

ーー 本業ではどのようなことをされているのでしょうか?

今、時間を一番使っているのはWebを軸としたDX(デジタルトランスフォーメーション)支援です。もう一つの顔として日本DAO協会に関わっている形になります。

ーー 日本DAO協会ではどのような関わり方をされていますか?

私は協会の組織のオペレーション設計を中心に関わっています。

本業がウェブのコンサルタントで、企業向けにウェブ戦略のインプリメンテーション(実装)、つまり、アドバイスだけではなく一緒になって集客して売り上げにつなげていくことが業務です。

組織のオペレーション設計や運営に関わるのが好きなので、そのスキルを活かして協会に貢献しているというイメージですね。

1人ひとりが輝く姿を見られる楽しみ

ーー DAOの魅力や可能性についてどのように考えていますか?また、日本DAO協会においてご自身が担っている役割について教えてください。

僕が関わっているのは主に組織内のオペレーションが中心です。日本DAO協会には、さまざまなDAOとの連携、ツールの研究、法務、政策提言など幅広い業務があり、弁護士やエンジニア、クリエイターなど、各分野のエキスパートが得意なスキルや能力を活かした活動をされています。2024年4月に施行された合同会社型DAO関連の法令に伴い、日本DAO協会は自主規制団体としての役割も担っています。

特に日本DAO協会の立ち上げメンバーには、若くて凄い人たちがいっぱいいて、彼らを見ているだけで僕も勉強になります。ただ、組織をまとめたり、オペレーションをしたりするには、やはり経験値が求められます。20年、30年と仕事をしていれば想像がつくことも多く、そこを経験者がしっかりサポートさせて頂くというのが僕の居場所かなと。

元々、宴会部長的な仕事が多いんですね。若い頃から幹事役も多くて、飲み会とかでピザを発注する側です。「1人ひとりが輝くのを見るのが好き」みたいなのがあるのかな。才能を見るのがすごく好きで、例えば、音楽とかスポーツ、アートの世界でも、やはり凄いパフォーマンスを出す人の姿を見るのがとても好きですね。

ーー このほかにも関わっていることはありますか?

今後は協会の会計面にも携わる予定です。日本DAO協会ではその組織の性格上、第三者から見てことさら正当性のある予算執行が求められると認識しています。MBAや新規事業、ベンチャー企業での経験を活かした貢献ができればと思っています。

ーー 日本DAO協会では月にどれくらい活動されているでしょうか?

毎週木曜日に開催の定例会議(オンライン、誰でも参加可能)が1時間半ぐらいで、定例とは別にタスクボードの会議が月3時間程度。このほか、分科会などに参加するとプラス3時間程度でしょうか。

平均すると月に合計15時間程度を割いている感じです。

会議に関して一つ言えるのは、タスクボード会議の一つの例として、作業と会議が一緒に進みます。
半分話しながら、皆で手を動かして、宿題を出すでもなく、その場その場で決めていく感じです。

皆忙しいので毎週必ず会議に出られる訳ではなく、また出席時間が限られているメンバーも多いので、参加方法は人によってまちまちです。例えば、5分だけ参加し、どうしても参加者全員に伝えたい重要なテーマを話して議事録に残す、といった方もいます。

完全同期ではないものの、役割を果たして爪痕を残していく、みたいな。
そういう関わり方もありだと思っています。

新しい挑戦をする「人」と「人」同士のやり取りに魅力

ーー 日本DAO協会に参加したきっかけを教えてください。

 2023年4月から7月まで、千葉工業大の「Web3概論」という社会人と大学生が一緒になってWeb3を学ぶ単位取得講座に社会人として入りました。

それまでビットコインやブロックチェーンなどを何となく知っていたものの、改めて基礎から勉強することが叶いました。

その延長線で、2023年7月に「Henkaku(変革) Discord Community」という、当時、千葉工業大学で変革センター長だった伊藤穣一さん(現:千葉工業大学 学長)が始められたDiscordコミュニティに加えて頂きました。

ここは各々が自分でやりたいプロジェクトを紹介していくコミュニティで、DAOっぽいことをやっていて面白かったんですね。

例えば、コミュニティには「$HENKAKU」トークンというものがあり、コミュニティに貢献したら、ブロックチェーン上でトークンがもらえるんです。

使い方がユニークで、お互いにスキルで交換する仕組みです。

例えば、オフラインでイベントをすると毎回着物で来られる女性がいます。以前、結婚した時にもらって以来妻の実家に置きっぱなしだった訪問着があったのですが、1回も袖を通してないと言うんです。なので、1回ぐらい着付けをしてもらって写真でも撮ってから処分しようとなり、先ほどの女性に相談しました。

僕が貯めていた$HENKAKUトークンを彼女に支払い、和装の女性が4人ほど集まって、写真を撮ったりランチを食べたり、というイベント代として使ってもらいました。

一方、その方から「Discordでコミュニティを作りたいけれど、分からないので教えてほしい」と依頼があったので、$HENKAKUトークンを頂いてお教えしました。

このように、スキルの交換でトークンの流動性を上げる取り組みは、結構うまく行きます。

Henkakuコミュニティには、Web3のエンジニアも凄い方々が沢山いるので、既にスキルの販売ショップのようなものがあるんですね。

そういうところで遊んでいて、これ面白いなって思っていたら、合同会社型DAOが2024年4月から法制化されて施行されるのを前に、手が足りないから誰か手伝ってくれないかとHenkakuコミュニティ内で話があり、面白そうだからと入ったことがきっかけです。

DAOにはひょっとしたら世界を変えられる可能性がある

ーー 日本DAO協会に入って良かったことがあれば教えてください。

テクノロジーの世界と逆になりますが、やはり人との出会いですかね。

Web3のテクノロジーに魅力を感じて起業した若者や、今までの色々な経験を生かしてボランタリーに社会貢献をしたいと思っている年配の方々が、フルネームや肩書でなく、ほぼアカウント名だけでつながっている。それがすごく面白いんですね。

DAOという組織の中では、会話もバイアスがなくフラットにできる。新しいテクノロジーや新しいことに挑戦する「人」と「人」同士でやり取りができるのが魅力です。

例えば90年代、インターネットの社会への普及が始まった段階では、一部の人々の趣味の実験場のような状況でした。

日本DAO協会の取り組みはこれと同じくまさに初期段階で、活動を通して知り合った方々の存在は、自分にとってそれだけで学びの成果かなと強く思います。

ーー 現代の日本をどのようにとらえていらっしゃいますか

民主主義と資本主義がもう限界を迎えていると思っています、例えば、選挙では、投票率×得票率で考えたら、もう1割位にしか支持されていない人が当選していくような時代かと。

もっと民意が反映されていくような、例えば5人いたら、この人には当選してほしいけれど、この人にはなってほしくないという順位をつけて投票する「ボルダ制度」のようなものはテクノロジーを使えば実現できる可能性があるのではないか。

DXも、単にペーパーレス化しただけで、真のデジタル化にはなっていない。企業活動も変わっていくと考えています。

日本DAO協会は、Web3技術を活用し、新しい社会の仕組みを構築することで、より公平で柔軟な社会の実現に貢献できる可能性を秘めていると思います。

改めてになりますが、DAOは非中央集権的で、匿名性が確保された中で意思決定を行えます。このようなDAOの特性は、従来の組織では対応しづらかった課題――例えば、透明性の高い資源配分や、幅広い参加者の意見を反映した意思決定――を解決する力を持っています。

ーー 日本DAO協会に入会したい方へメッセージをお願いします。

 一つは、本当に僕が思う自由が(協会に)あると思います。

性別や年齢、学歴とか国籍という本人ではどうにも変えられないものではなく、その人がどういう人で、何をしたいか、ということが最優先されます。

コミュニティ内にはもちろん、色々な責任やタスクなどがありますが、そこを含めてすべて自由に意思決定ができます。

タスクは誰かが決めたものに乗っからなくてはならない、というものではなく、自分に決定権がある。DAOの組織を通じて、やりたいことをやれば良いんです。ひょっとしたら世界を変えられるかもしれない、そういった魅力があると思います。

コミュニティ内には良い人しかおらず、疎外感を持つことはないと思います。
Web3周りはまったく駄目という人でも、ちゃんと助けてもらえて楽しく貢献することができます。

コミュニティ自体がまだまだ一般化していないからかもしれないですが、メンバーそれぞれが経験している記憶がまだ新しく、「もっと仲間を増やしたいから新しく加わる人には丁寧に教えよう」という連鎖になっています。

暗号資産には、投資や投機のリスクがあり、完全に自己責任だと思いますが、DAOという新しいテクノロジーと新しいコミュニティに入ること自体はほぼノーリスクと思っています。

何も失うものはなく、むしろ得るものしかないのかなと。

これまで協会を見てきて、色々と足を突っ込んで自分の学びに少しでもしたい、といった若い方の意見が勉強になったりするんですね。

現在は、そうしたものをストックしている感じです。

あと、まだ「0→1(ゼロイチ)フェーズ」で、ここに加われるチャンスはそうそうなく、優秀な人たちが集まっている。

チームに入っていただいて何も残らないわけがないと思っています。

花開かないプロジェクトがあったとしても、このチームでできた財産は絶対に生きてくる、と楽観的に考えています。

インタビューを終えて

shigeさんのお話を聞き、テクノロジーも大切だが、素晴らしい人たちと出会い、つながれる点がDAOや日本DAO協会の魅力であることを再認識しました。

少しでも気になる、という方がいましたらお気軽に協会までご相談ください。

この記事を書いた人

nasushin
nasushin
各地の地域DAOや、過渡期にあるDAOのさまざまなプロジェクトの言語化に興味があり、取材やライティングをしている。千葉県出身、埼玉育ち、現在、横浜市在住。