DAOっていったい何?日本DAO協会が策定したDAOの定義(Ver.1)と背景をDAO設計士が解説!

初めまして、DAO設計士の澤と申します。

これまで、RULEMAKERS DAO、共創DAO、Re:Asset DAOなど数々の黎明期のDAOに携わってきました。DAOが日本の法律で正式に制定されて約2年になりますが、それまでは「DAO設計士」という肩書で仕事をしていたわけではありません。元々はコンセプトメイキングを基軸に、企業や地域のトータルプロデュースをすることが専門でした。

地域や企業の「独自の価値」を言語化し、そこから組織や事業を立ち上がらせていく。そのスキルセットが偶然DAOの設計にドンピシャで当てはまり、様々なDAOの立ち上げを手伝う中で、気がついたらDAOの設計士になっていたわけです(笑)。

現在はさまざまにDAOに携わる中で、最もDAOの実装に成功していると感じている宮城県東松島にある「KIBOTCHAスマートエコビレッジDAO」に拠点を移し、日本円をほとんど使わずトークンで生活する「DAOネイティブ」としての挑戦を続けています。

さて、そうした経緯もあり、今回は日本DAO協会という「DAO」を立ち上げていくにあたって、極めて重要となる「DAOの定義」の言語化を担当させていただくことになりました。本コラムでは、私たちが半年間の議論を経てたどり着いた定義の真意と、その歴史的な背景について解説します。

1. なぜ今、DAOを「定義」するのか

DAOの設計図を引く立場として、私が最も重視しているのは、定義とは単なる言葉の整理ではなく、組織における「憲法」であるということです。

「DAOは自由だ」という捉え方もありますが、共通の定義が曖昧なままでは、組織は「なんとなくの空気感」で動かざるを得なくなります。それでは個人の私見や声の大きい人の意見が優先され、自律的な発展は望めません。私たちが目指すのは、誰もが納得感を持って活動できる「健全な生態系」です。そのための基盤として、以下の定義を定めました。

DAOとは、『独自の価値』の創出を軸に、『律(ルール)』と『分(ロール)』によって「集合(全体)」と「要素(個)」それぞれの目的が両立・最適化されるよう設計された、透明で流動的な組織体、またはこれを目指す組織体である。

※本定義は、我々が考える「現時点での最適解(Ver.1.0)」として提示するものであり、今後も議論と実践を通じてアップデートし続けます。

この一文には、次世代の組織OSを正しく稼働させるための4つのコア要素が組み込まれています。

2. 定義を構成する「4つの項目」の解説

① 『独自の価値』の創出を軸に

DAOの中心にあるのは、単なる金銭的報酬だけではありません。「この体験を共有したい」「この文化を守りたい」という、人々を惹きつける「引力」です。これを私たちは、外部の物差し(市場価格や既存の評価)に依存しない、その組織の内側から湧き上がる『独自の価値』と定義しました。この「動く理由」が明確だからこそ、中央管理者の強制力がない分散型組織でも、人々は自律的に動き続けることができます。

② 『律(ルール)』と『分(ロール)』によって

情熱や熱狂を、持続可能な組織にするための「仕組み」です。特定のリーダーの恣意的な判断ではなく、合意されたプロトコルである『律(ルール)』と、固定された肩書ではなくその時々の役割を示す『分(ロール)』。この2つを明確に設計することで、「誰が言ったか」ではなく「何をするか」で物事が進む、公平な基盤が構築されます。

③ 「集合」と「要素」の目的の両立・最適化

既存の組織が抱えていた大きな課題は、「会社(集合)のために個人(要素)が我慢する」というトレードオフの構造でした。DAOの設計思想の核心は、「個人の幸せや目的(要素の利益)」を追求して行動することが、そのまま「組織全体の価値(集合の利益)」の発展に直結するように設計されている点にあります。この「相利(そうり)」の関係をシステムとして実装するのが、DAOの真髄です。

④ 透明で流動的な組織体

DAOは一度作ったら変わらない固定された「箱」ではなく、淀みのない川のような存在です。お金や意思決定の流れを可視化し(透明)、環境の変化に合わせて人が自由に出入りし、ルールさえも自分たちでアップデートしていく(流動)。この「新陳代謝」を、人の善意だけに頼らず、ブロックチェーンという技術を活用して担保します。

DAOと既存組織との比較表

3. この定義に至った歴史的背景

この定義は、決して机上の空論から生まれたわけではありません。インターネット以降の社会システムが直面してきた「3つの限界」を乗り越えるために導き出された、歴史的な必然です。

1. Web2・資本主義の限界(中抜き構造の超克)

巨大なプラットフォームや企業が中心にある構造では、個人の貢献が「株主利益」などを経由して間接的にしか報われない「迂回構造」が主流でした。DAOは、価値を生む人と享受する人を「ダイレクト」に結びつけることで、この搾取構造をアップデートします。

2. 初期Web3(DAO 1.0)の限界(冷徹なコードの超克)

「Code is Law(コードこそが法)」を過信しすぎた初期のDAOは、人間味や文脈を切り捨て、全てを数値やトークンで解決しようとした結果、投機的なマネーゲームに陥ることもありました。私たちは、「人間中心の独自の価値」を軸に再定義することで、持続可能で温かみのあるシステムを目指しました。

3. 従来型コミュニティの限界(閉鎖性の超克)

有志によるコミュニティには熱量がありますが、「善意」や「空気」に依存しすぎると、一部の人の自己犠牲や閉鎖性を招き、やがて活動が疲弊してしまいます。DAOは「透明性と流動性」をルールとして組み込むことで、属人性を排し、常に開かれた協力関係を構築します。

結びに代えて

DAOの定義を定めることは、単なる言葉の整理ではありません。それは、私たちがこれからどのような組織を築き、どのような価値を社会に実装していくのかという、「設計図の公開」に他なりません。

日本DAO協会は、この定義を組織の指針とし、多様な価値観が尊重され、循環し続ける未来を皆様と共に創っていきたいと考えています。設計士として、この新しい組織のあり方が社会に正しく実装されていく過程に、引き続き全力を尽くしていきます。

この記事を書いた人

澤海渡
澤海渡DAO設計士
DAO構想・世界観設計を専門に、RULEMAKERS DAO、共創DAO、NEO88DAO、DAO大学、Re:Asset DAOの立ち上げに参画。学生時代の3,000人へのコーチング経験を活かし探究教材を全国出版。現在はKIBOTCHAにジョインし、家族でトークンハイブリッド生活を送りながらDAOネイティブとして挑戦中。