全国から22のDAOが大阪に大集結!ソーシャルInnovationEXPO 2025を合同会社BACwithと共催しました

2025年6月8日、大阪・マイドームおおさかで「ソーシャルInnovationEXPO 2025」が開催されました。全国から22のDAOが集まり、日本最大級のDAOリアルイベントとなりました。日本DAO協会も、合同会社BACwithと共催という形で、今年1月頃から準備を進め、メインセッションの企画やブース出展を担当しました。

普段はオンライン中心に活動していますが、リアルの場でDAO実践者のみなさんと直接会ってお話しできる貴重な機会になりました。この記事では、当日のセッションや出展DAOの事例、現場で感じたことを私なりの視点でまとめてみたいと思います。

「DAOの未来」セッション

最初のセッションでは、DAOを使ったこれからの変化やDAOの未来について、DAO業界をリードする日本DAO協会メンバーが語りました。

◾️ macさん(RULEMAKERS DAO/共創DAO合同会社/弁護士)

macさんは、宮城県東松島市で進める「KIBOTCHA」プロジェクトを紹介。災害時でも1万人が安心して暮らせるスマートエコビレッジをDAOの形で運営し、関わった人には独自のトークン(ポイント)を発行。施設内で使え、何にどれだけ配るかもみんなで決めています。

「昔なら通貨を自分たちで発行するのは違法だったが、今は国がむしろ後押ししている。この時代の変化そのものがわくわくする」と語ります。

さらに「万博で各国のパビリオンを回ると『コミュニティが大事』と言っている新興国が一定数あった。日本は本来コミュニティ文化があったのに会社化してきた中で、様々な齟齬が生まれている。経済成長と共に組織化が求められる新興国にフィットするのはコミュニティベースの組織化、事業化なのかもしれない。地方でつくったDAOのモデルを新興国にもインストールできるのでは」と、地方からグローバルへ展開する可能性についても言及していました。


DAOのわくわくする未来について語るmacさん(写真の一番左)

◾️ 上泉さん(株式会社Unyte /おさかなだお長崎)

上泉さんは「DAOは資本主義をぶち壊せるくらいの可能性がある」と語りました。

これまでの経済は一つの通貨で価値換算されてきましたが、DAOでは各コミュニティが自分たちの価値に合わせたトークンを発行できます。「物々交換でも国家通貨でもない、新たな経済圏が生まれていく。それ自体が革命的」と言います。

さらに「生成AIの進化で『ものを作る仕事』はAIに代替され、人間の生きがいは『生産』から『コミュニティへの貢献』に移っていくのではないか。DAOは、そうした貢献を可視化し、新しい経済圏を作って循環させていける仕組みになる」と話していました。

最後に、「これからはコミュニティファーストな社会になる。コミュニティを作って回せる人が最強になる」と語っていたのも印象的でした。

◾️ RYUさん(牛の角突きファンクラブ/ネオ山古志村)

RYUさんは「今の社会は地図上に作られた“区切り”で捉えてしまう。でもインターネットによってその境界線がどんどん曖昧になっている」と話しました。

山古志でも、現地に住んでいなくても全国から応援する人が集まっています。「住む場所でなく目的で集まる新しい集団が生まれ、それが地域という縛りから解放された自由な社会につながっていく。その流れにわくわくしている」と言います。

「自由な社会になったらいいな」という素直な一言が心に残りました。

◾️ aramsanさん(株式会社ガイアックス/美しい村DAO)

aramsanさんは「これからDAOは、クラウドファンディング(クラファン)のように“当たり前の選択肢”になっていく」と指摘しました。

クラファンが出始めた当初は抵抗を感じる人も多かったけれど、今ではごく自然に利用されています。DAOも同じように、今はまだ新しい仕組みに見えるものの、いずれはプロジェクトを始める際の普通の方法のひとつとして広がっていくと面白いと説明されていました。

「その未来を実現するためにも、他のみなさんが語ってくれたようなDAOの実践を、日本DAO協会としてこれからも後押ししていきたい」と締めくくりました。


「DAOの未来」セッションの様子。写真左からmacさん、上泉さん、RYUさん、aramsanさん

「地方創生 成功事例」セッション

続くセッションでは、既に現場で動いている3つの地方創生DAOの事例が紹介されました。どれも実務的に参考になる内容ばかりでした。

◾️ ネオ山古志村(新潟):ネオ山古志村世話人、山古志Voicyパーソナリティるいさん

山古志村では、地域や血縁に限らず、山古志を応援する「デジタル村民」と地域住民が協働する仕組みが生まれています。

  • リアル村民:約700人
  • デジタル村民:約1,700人(リアルの倍近い関係人口)

デジタル村民はオンラインで企画アイデアを出し合い、リアルイベントにも参加。小中学校の運動会、お祭り、清掃活動、やまこしラジオ(Voicy)など、多様な活動を展開中。ラジオ配信は600回以上、平日毎朝配信されています。

熱量が続く秘訣として、「関わり方は人それぞれで良い」ということ、「活動の中で地域の人に喜ばれ、フィードバックがもらえること」などを語っておられました。

◾️ ぐんま山育DAO(群馬):株式会社ガイアックスDAO事業部 コンサルティング責任者上井さん

群馬県庁・株式会社ガイアックス・チモリ合同会社が連携し、自然派ワインを育てて販売するプロジェクトを運営。DAOの考え方を取り入れつつ、出資は株式会社の株式で行い、現在400万円を調達済みです。

現在は畑を整備し、苗を植え、4年後のワイン完成を目指して準備を進めています。その間もイベントを開催し、イベント予算も参加者の投票で決定しています。

「お金だけでなく人も集められる」「参加体験がそのまま経済的な成果にもつながる」点がDAOのメリットと語られていました。

出資者にはワインが贈られる特典も用意され、1万2,000円から出資可能。ワイン好きの方とDAOに関心のある方、どちらの層も参加しているそうです。


ぐんま山育DAOについて語る上井さん(写真の右)

◾️ やいまDAO(沖縄・石垣島):株式会社andBeee矢井田さん

八重山地域の課題解決を進めるやいまDAOでは、「aniMa」アプリを活用し、貢献に応じて「精霊」が育つ仕組みを導入。コミュニティ参加のきっかけを楽しくデザインしています。

特徴的なのは、大企業・大学との連携の深さです。

  • プレミアグループ株式会社(3年連続イベントのスポンサー)
  • ZEN大学(石垣にサテライト拠点開設)
  • Future Design Lab.(IBMのシンクタンク)

この連携の背景には、「地域課題に真正面から向き合い、八重山ならではの価値を発信し、多様な人が参加できるプラットフォームを創る」というアプローチがあるそうです。

「くらし・心・自然の豊かな八重山」の実現を目標に掲げ、特にサンゴ礁保護を最大限に尊重し、八重山の文化・伝統・アニミズム信仰を重視して事業を選定しているとのことでした。

「地方創生 成功事例」セッションの様子。写真左からるいさん、上井さん、矢井田さん、aramsanさん

出展DAO紹介 


ソーシャルInnovationEXPO2025の出展DAO一覧(22団体)

会場には全国から合計22のDAOが出展。当事者ならではの試行錯誤やアイデアが伝わってきました。

ここではその一部をご紹介します。

  • KIBOTCHA(宮城県東松島市)
     廃校を活用し、有事の際に1万人が安心安全に暮らせるスマートエコビレッジを構築中。ブロックチェーンは未導入ながら、すでにスプレッドシート上でトークンのやり取りを行い、開発業務や宿泊での利用も始まっています。独自の経済圏が実践ベースで回り始めている様子が印象的でした。

KIBOTCHAのブースの様子

  • 塩尻トークンラボ(塩尻DAO)
     Web3技術を活用し、塩尻市で関係人口創出や自己成長の機会の提供を目指して活動中。オープンソース・ソフトウェア(OSS)「Toban(当番)」を開発し、役割ベースで貢献度を可視化し報酬をトークンで分配する仕組みを実装しています。
     私自身、日本DAO協会のコミュニティ運営で感じていた課題にぴったりで、その場で協会内でも実験的に導入することが決まりました。

塩尻トークンラボ(塩尻DAO)のブースの様子

  • 日本DAO協会
     DAOの健全な発展を目指して活動している協会の活動実績や運営形態などを紹介。ガイドライン整備、DAOリスクレビュー、コミュニティ運営事例などを対面で共有する貴重な機会となりました。地方創生DAOに取り組む方と協会が直接つながれたことは、今後の協会活動にとっても大きな収穫でした。

日本DAO協会のブースの様子

今回出展したDAO一覧はこちら▼

ソーシャル Innovation EXPO 2025(6月8日) ─ 出展DAO22団体まとめ:空き家・農業・宇宙まで

2025年6月8日(日)にマイドームおおさかで開催される「ソーシャル Innovation EXPO 2025」には、全国から22のDAOが集結します。 今回の出展では、空き家再生や農業、観光…

イベントを終えて 

DAOポーズ(?)をしている日本DAO協会メンバー

今回のイベントには、日本全国から地方創生やDAOに関心のある人たちが集まり、大盛況となりました。同じような課題に取り組んでいる方同士が情報交換をしたり、新たな出会いが生まれたり、リアルならではの空気感がとても印象的でした。

私自身、地方創生の現場についてはこれまであまり詳しくなかったのですが、実際にさまざまなDAOの方のお話を聞く中で、少しずつ解像度が上がっていくのを感じました。むしろ今回の出会いをきっかけに、各地の現場にも実際に足を運んでみたくなっています。

普段はオンライン中心で活動していますが、こうしてリアルの場で顔を合わせることで、やっぱりエネルギーをもらえるなと改めて感じました。本当に多様なバックグラウンドの方々が集まっていて、会うたびにモチベーションが上がっていきます。

今後も、こうしたリアルの出会いの場を大切にしながら、日本DAO協会としても引き続き活動を続けていきたいと思います。これからもぜひご参加・ご協力いただけたら嬉しいです!

合同会社BACwith(本イベントの主催者)と日本DAO協会のコラボレーションにより実現しました

この記事を書いた人

Yuri
Yuri
日本DAO協会レップホルダー。協会のコミュニティ・組織運営、広報周りを担当。普段はIT企業の会社員として働きながら、新しい組織であるDAOのカタチを探究中。