「合同会社型DAO」とは?弁護士macによる「合同会社型DAO」の解説イベントを開催しました
2024年4月8日、4月1日公布4月22日施行の「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」との関係を含めて、「合同会社型DAO」について解説するイベントを開催しました。
2024年4月1日の金融商品取引法(金商法)の府令改正によって、日本では合同会社型DAO(DAO:Decentralized Autonomous Organization 自律分散化組織)という組織形態が設立されていく可能性があります。
今回のイベントでは、RULE MAKERS DAO(RMD) Co-founder/日本DAO協会のmacさんより、今回の金商法の改正によって合同会社型DAOでどのようなことができるようになったのか、その際に留意すべき点などを、法律の改正のポイント、DAO全般に触れつつ説明いだきました。
登壇者プロフィール
mac さん
RULE MAKERS DAO(RMD) Co-founder/弁護士
2020年よりスタートアップ法務、テクノロジー法務を専門とする弁護士として活動する傍ら、2022年に”ルールメイクで日本を良くするコミュニティ”である「RULE MAKERS DAO」を立ち上げる。日本DAO協会についても、発起人として大きく貢献。現在は香川県でWeb3、DAOプロジェクトの立ち上げに尽力している。
目次
DAOとは
はじめに、DAOという言葉の定義について説明いただきました。
macさんからは「現状広く人々が共通の認識を持つ明確な定義はなく、多種多様な組織形態・目的のものになっています。DAOの共通のキーワードは、”スマートコントラクトとトークン”、分散型のガバナンスと参加している人々による役割ベースの自律的な組織運営・事業推進”になります。」と、お話しいただきました。
また、DAOは、「既存の資本主義経済の持つ課題や日本の人口減少の解決として、あるいは資本主義のアップデートとなると考えています。」との考えも述べていただきました。
DAOとは
日本DAO協会の役割
次に、日本DAO協会の役割について話していただきました。
macさんは、「日本DAO協会とは、既存の中央集権型のシステムからTakeoffし、新しい分散化されたシステムへとSoftLandingするために既存の法律を活用しつつ、新たな分散化された組織にするための橋渡しとしての存在になるものと考えています。」と話されており、DAOが現在の日本社会に社会実装されていくための、橋渡し役を担う協会なのだということがわかりました。
日本DAO協会の役割
DAOの将来像
また、macさんの見解としてDAOの将来像をお話しいただきました。
「DAOの将来像としてはDAOのもつアセット(資産)、トレジャリー(運営資金)、トークンを中心に、DAOの目的/理念/visionに共感した既存の企業、個人が達成するために役割をになっていくことになるプラットフォームのような形になると考えられます。」と、個人や企業といった組織の垣根を超えて共感する目的、理念、ビジョンを通じて繋がり活動していく存在になっていく期待を感じる内容でした。
DAOの将来像
DAOにおけるトークンの分類
DAOについてのお話に続いて、DAOの中で使われるトークンについてお話しいただきました。
協会で想定しているトークン(token)は以下の6つに分類されると想定されます。
- Equity token:社員権等を表章するもの
- Governance token:投票資格を示すもの
- Voting token:投票するために使えるもの
- Reward token:活動の貢献に応じて獲得できるもの、様々なユーティリティーを持ち、DAOのアセットと交換できるもの
- Coupon token:合同会社特有のトークンで、社員優待に近いもの
- Dividend token :配当として渡されるもの
今回の府令改正によってEquity tokenの取り扱いが緩和されることになりました。
またDAOによっては複数の種類が一つのトークンにまとめられるケースもあります。DAOのステークホルダー(DAOに関係する人、企業など)によってトークンを設定することになります。
DAO内のトークン分類
DAO組織の分類
次にDAOとして想定される組織分類について、以下4つが想定されます。
- 任意団体型DAO
- 認定/非認定NPO法人型DAO
- 合同会社型DAO
- 営利型DAO
DAOの形態は、その目的、利益分配の有無、利益分配の制限の有無等で的確な形態を選ぶことになります。
また、営利型DAOについては今後の法改正を経て設立できるようになると考えられます。
協会が想定するDAOの4分類
府令改正によってできるようになったこと
今回の金商法の府令改正によって合同会社型DAOが設立できるようになりました。これは府令改正によって社員権トークン(equity token)が一項有価証券から、二項有価証券になったことにより、自己募集に係る業規制や開示規制が適用されなくなったことによります。
しかしながら以下の点は注意が必要になります。
- 有価証券を保有することがメインの事業であるDAOは、原則として499人までしか社員を集められないこと
- 原則として業務執行社員による取得の勧誘しか行えないこと
この注意点について、今後DAO協会でガイドラインを作成していく予定をしています。
また、実際にトークン設計を行う際には、メンバー種別によって収益分配に制限がある点にも注意が必要です。
今回の府令改正によって変わること
ユースケースについて
次に府令改正後のユースケースとして、2つの具体例がお話の中で示されました。
例1.空き家古民家DAO
空き家(家、店舗、公的不動産など)を合同会社型DAOで所有等し、議決権、収益分配を受ける権利、報酬を受ける権利をDAOに参加する人たちに持たせるケースです。
資金調達を行う際に出資者に社員権トークン(NFT:非代替可能トークン)を付与します。出資者に対しては、出資額を上限とする現金またはトークンを分配することができます。
また貢献に応じて投票に使えるVoting tokenを配ることで、分散型のガバナンスの意思決定を導入することができるようになります。
ユースケース1 空き家古民家DAO
例2.陸上養殖DAO
地域の水産施設(使われていない水産試験場、水産加工場など)を合同会社型DAOで所有するケースです。
このケースでは複数のスタートアップ企業が技術や労力を現物出資という形で出資し、社員権トークンを取得します。またスタートアップ企業の技術に対して個人投資家等から出資を受け、一種のジョイントベンチャーのような形態をとることができます。
ユースケース2 陸上養殖DAO
合同会社型DAOの未来
今回の府令改正後の合同会社型DAO、NPO法人型DAOでの想定されるロードマップについて、それぞれの形態による課題を、macさんの見解も含めて説明いただきました。
両形態のロードマップとも、調達した資金についての意思決定権をトークンホルダーに持たせることがポイントとなります。そうすることによって資金の持ち逃げなどの詐欺行為を防ぐことができると考えられます。
合同会社型DAOの未来
NPO法人型DAOの未来
最後に
今回の府令改正にともない、日本DAO協会では、FAQの作成やDAOのガイドラインの作成をしています。作成には様々な人に参画してほしいと考えています。また今後(2024年4月22日)資金調達が解禁されることで、DAOの紹介やDAOのネガティブチェックリストの作成を進めており、こちらも参画した人たちと一緒に作っていきたいと考えています。DAOのユースケースについても同様です。
合同会社型DAOは設立費用も少なく、DAOツールを使うことで、小さく始めることができると考えています。
日本DAO協会としても設立に必要な定款などの雛形を提示していく予定をしており、それを利用してやってみようと思っていただけるようにしたいと考えています。DAOを設立する際に重要なのは、資金の意思決定権、トークン設計の意思決定権をトークンホルダーに持たせることであり、それによって詐欺を防ぐことができると考えています。
また合同会社型DAOについて、今後様々なトラブルや、想定していなかった課題などが起きると予測されます。その際に、日本DAO協会は情報を収集し、様々な知見を持つ、参画している皆さんと議論をしてベストプラクティスを見つけていき、健全なDAOのエコシステムを作っていきたいと考えています。
皆さんの日本DAO協会への参画をお待ちしています。
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この記事を書いた人
- web3の技術に将来を感じ、HekakuコミニティなどのWeb3コミニティに参加し活動中。昼間は食品企業で知的財産関連の業務に携わっている。趣味はテコンドー、クライミング、ランニング。