動きたいのに、動けない。DAOで感じた見えない壁の正体

動きたいのに、動けない。DAOで感じた見えない壁の正体

DAOって、「自分で決めて動いていい」はずなのに、なぜか動けない。
そんな経験はありませんか?

日本DAO協会では、「DAOらしい運営」を目指して、さまざまな実験を重ねてきました。
私自身もその中で、タスクボードの導入やオンボーディング環境の整備といった取り組みを進めてきました。

少しずつ動きやすい環境は整ってきましたが、それでも「なんとなく動きづらい」「誰かに気を遣って前に進めない」といった感覚は残ってしまっています。

このコラムでは、その違和感の背景にあるものと、そこから見えてきた構造と文化の課題、
そしてDAOがどうすればもっと自然にエネルギーが流れ続ける場になれるのかについて、
私なりの視点で綴ってみたいと思います。

※本コラムは筆者個人の視点に基づいたものであり、協会全体の公式見解を示すものではありません。

自由に動けるはずなのに、止まってしまうのはなぜ?

DAOでは「誰でも提案できる」「自律的に動ける」といった自由な雰囲気が掲げられています。
私もその空気に惹かれて、日本DAO協会に参加しました。

でも実際に何かを動かそうとすると、
「ガイドラインは?」「セキュリティは?」「みんなで決めないと」といった声が上がり、動きが止まってしまうことが何度もありました。

会社でも根回しや合意形成は必要で、面倒に感じることもあります。

でも、「この上司に確認すればOK」「この会議体を通せば進めていい」といった、意思決定のルートや責任の範囲がある程度明確になっているぶん、進め方の見通しは立てやすくなっています。

一方、日本DAO協会のように中央の管理者がいない組織では、
誰がどこまで決めてよいのか、誰が責任を持つのかが曖昧なまま、自由だけが先に立っているような状態になりがちです。

そんな中では、動こうとする人も「このまま進めていいのかな」「勝手にやったと思われないかな」と迷います。

周りの人も、「みんなで決めた方がいいんじゃないか」「もし何かあったら責任は取れない」と不安になり、慎重になります。

そして、いつの間にか、「やってみたい」と思って動き始めた人のエネルギーが、
少しずつ滞り、消えていってしまうのです。

協会も、最初はそうじゃなかった

立ち上げの頃の日本DAO協会では、そのようにみんなが慎重になってエネルギーが途切れることはありませんでした。
小さな関心や「やってみたい」という想いが流れ込んできて、それが自然に広がっていくような動きがあちこちで生まれていました。

だからこそ、DAOを勉強してみたいという気軽な気持ちで参加した初心者の私が、いつの間にか日本DAO協会のホームページ構築を行い、レップホルダーとして広報やコミュニティ運営を担うことになったのだと思います。

しかし、活動が少しずつ拡大し、組織としての責任や対外的な信用が問われるようになるにつれて、
「勝手に進めるのはよくない」「まずはルールを整備してから」といった声が強くなり、
いつの間にか「動くために必要なこと」より「止める理由」のほうが先に語られるようになっていった気がします。

DAOの中で、エネルギーが流れ続けるために

DAOでは、「自由に動けること」が前提にある一方で、動こうとした人のエネルギーが途中で滞ってしまうことがあります。

流れを止めないためには、自由を支える構造と文化が必要です。

たとえば、

  • 誰がどの意思決定をできるのかが、透明になっている
  • 「この提案は、この人が責任をもって進める」と決まっている
  • どこまでをルールで決め、どこからを信頼で任せるかの線引きがある
  • 「まずやってみる」が歓迎される文化がある

こうした前提や仕組みがあることで、エネルギーが流れやすくなり、自律的な行動が自然と生まれていくのではないかと思います。

実は私も、動きを止めてしまったことがある

……と書いてきましたが、私自身もいつも「動く側」でいられたわけではありません。

誰かが「やってみたい」と言ってくれたときに、つい、
「でも、それってどうやって進めるの?」「みんなの合意を取らないといけないから難しいかも」と返してしまったことがあります。

きっとそのときは、これまでの経験からリスクを先に見てしまったのだと思います。
そのせいで、知らず知らずのうちに「止める側」になってしまっていました。

DAOでは、誰もが「動く人」にも「止める人」にもなり得ます。

だからこそ、自分自身のあり方やものの見方を常に問い続け、見直していくことが、
DAOという場が少しずつカタチを変えながら、育っていくことにつながるのだと思います。

最後に

私にとって、DAOとは一人ひとりのエネルギーが自然に流れていく場所であってほしいと思っています。

「ちょっと気になる」「やってみたいかも」
そんな誰かの小さな動きが、止まらずに広がって、循環していく場をつくりたいと考えています。

でも、同じ人ばかりで動いていると、構造や文化が固定化されて、エネルギーがうまく流れなくなることもあります。

だからこそ、新しい人の視点や価値観が入り、少しずつ新陳代謝していくことが大切だと思うのです。

もし、こんな想いに共感してくださる方がいたら、
日本DAO協会で一緒に、新しい組織のカタチを探っていけたらうれしいです。

この記事を書いた人

Yuri
Yuri
日本DAO協会レップホルダー。協会のコミュニティ・組織運営、広報周りを担当。普段はIT企業の会社員として働きながら、新しい組織であるDAOのカタチを探究中。